タグ別アーカイブ: トップダウン

480.組織マネジメントに権威、権限は必要です。

先日、私のブログを毎回読んでくれている信頼、尊敬する先輩から、「君の考えは、反権威、反権限で一貫していてぶれなくていいよ」、とお誉めの言葉を頂きましたが、私としては、それはちょっと違うのだけど、という困った心境になりました。私は、サラリーマン時代に卓越した技術を持ち市場で圧倒的な優位な会社にいました。そこはトップダウンがあたりまえ、その上意下達で業績はどんどん上がっていました。下位のものが上司にもの申すなどご法度で、そんなことをしたら即刻はずされる場面を多く見てきました。会社で自由な発言などできないのは普通のことと思っていました。堅苦しさや閉塞感はありましたが、他社での経験もないので会社はそういうところで、お金をもらって生計も立てているので違和感はありませんでした。ただ、私の上司は少し行きすぎていて、「自分が考え指示するからお前たちは考えるな、手足として動けばいい」と言い放っていました。軍隊方式ですが、考えなくていいのは楽なところもあります。ただ長時間肉体労働だけすればいいのです。無駄がなく効率的でもあります。しかしその時、仕事を通しての自分の成長はありませんでした。そしてこの方式がうまく回るのはビジネスモデルが固定していて単純繰り返しの仕事でも良かったいい時代です。

サラリーマンを辞めた後、完全ボトムアップ、フラットなコンサル会社で働きました。そこのオーナーは、権威、権限によるマネジメントを否定し、役員たちにもそうでないマネジメントをするように指示していました。そこの社員はフラットでわきあいあい、優しく穏やかで実に居心地に良い職場でした。しかし困ったことが起きます。職制がないので、上からの指示で部下は動かなくても良く、自分の内発的動機が生まれるまで嫌いな仕事はしなくて良いのです。社員は全員フラットですから、先輩が後輩に仕事の指導をすることはできません。そんなことをしたらすぐに下から反発されて進みません。私が経営を任されていた時、やはり数字を出さなくてはいけないと思い、いろいろ上から優しく指示、命令しますと、「あなたって資本主義的、この会社の理念に合わない」、と予想もしなかった批判もされました。たぶん会社のマネジメント層は社員の敵であり、自分たちは社員の側に立つのが正義と思う人が多数だったと思います。それでも受注が続いていくのはそういうニーズが社会、会社にあるのだと思います。

両方のマネジメントのかなり極端な会社を経験しての私の結論は、会社では職制は方針、戦略の浸透、定着のためには必須でそれを実行していくための、権限、権威もなければ会社は動かないということ。職制を否定、フラットな組織に近づけた会社は、方針、戦略が浸透せず、部下は上司の言うことを無視するので、緩んだ甘い会社になってしまい、業績が低迷してしまいます。そういう会社を現実に見ました。無政府状態です。社員は自分に都合の良いように好き勝手やるだけです。それはやりすぎです。私は、社員でも絶対服従ではなく、会社や上司の言うことに、質問、意見、議論を自由にさせることは必要です。しかし最終決定は上司、会社にあることは明確にしてから行なわないといけません。そうしないと会社は機能しません。やはり、組織、会社には、権限、権威は必要です。

それでは、チュース!!

 

415.トップダウン信者とボトムアップ信者の戦い

私の仕事の主テーマに、戦略、方針をいかに上から下に伝え行動させるか、また下から上に現場情報を流して経営戦略に反映させるかがあります。なぜ、そんなことを大切と考えるようになったかのいきさつを話します。

私が勤めた富士フイルムは、銀塩写真フィルムで圧倒的な差別化技術を持ち、長い間会社の優位性を技術力で維持してきました。優秀な人材はたくさんいましたが、ほっておいても売れる素晴らしい商品がありましたから、人材は金太郎飴的で良く、尖った人間は一部のリーダーになる人間以外は必要ありませんでした。ですから、トップマネジメント、幹部管理職は圧倒的な権力、権限を持ち、トップダウンで事を進めていました。私の上司だった現在の富士フイルム古森会長はその典型でした。古森氏がドイツの社長時代、彼のスタッフN氏は、古森さんの強権、横暴に見える彼のビジネス姿勢に良心から危惧を持ち、変革してもらいたいと思っていました。90年台後半のその頃、日本で職場風土改革の会社を設立していたS氏の本「なぜ、会社は変わらないか」がベストセラーになっていました。内容は暴君だった部長が、部下とのやりとりを通して改心して民主的なリーダーに変革し、部も会社もハッピーになるというストーリーでした。N氏は、その本を読み感銘しこの内容を古森氏に共感してもらい、古森氏も会社も変革して行こうという企てをし、日本からS氏を高額で呼び研修を行いました。古森氏は、S氏が自分と同窓の東大教養学部の博士を取得していることに敬意をはらいました。S氏は、若い時にドイツに滞在し自分の会社名もドイツ語から取り、ドイツ語学学校も設立、運営するほどのドイツびいきでしたので、忙しい中そのオファーを受けデュッセルドルフまでやってきました。

そもそも古森さんは職制を通した超トップダウンを信望、S氏は権力、権限による組織マネジメントを否定、フラットな組織で内発的動機だけで動く組織を信望、組織風土が良くなれば自然と良い戦略は出てくると言う考え方です。これは宗教が違います。水と油です。私はうまくいかないと懸念していましたが、N氏は強行、研修はなんとか終了しましたが、その後の会食で、古森氏とS氏はバトル勃発、双方とも超強気で自信家、譲ることはしませんから、激しい相手非難になり決裂したまま終了しました。その場にいたN氏は胃痙攣になって病院に行ったか運ばれたそうです。

当然古森氏は、その後、なぜあんなのを呼んだのと激怒、私はその後S氏の会社で少し働きましたが、S氏は古森さんを、今どきあんな軍隊的な高圧的なリーダーがいるなんて信じられない。富士フイルムは彼がリーダーならじきにつぶれると何回も言っていました。これは、考え方が180度違うから必然として起きるバトルです。S氏は、普段は弁証法のへーベン、アウフへーベンを持ち出し、異なった意見も受け入れる姿勢を見せるのですが、この時は完全否定でした。

今から20~30年前まで、日本の会社の技術力が圧倒的に強く差別化出来ていた頃は、やることを細かく指示するトップダウンが効率的にワークしていました。灰皿やファイルが飛び、罵声が響くパワハラがあっても、問答無用で上の言う通り従って動く方が効率的な時代はそれが効率的でパワハラは黙認されていました。しかし今の時代は、現場に近いところで、現場で起こっているところの情報、特に悪い情報も上に上がって行って戦略を適確に修正しなければビジネスの成功は危ういと思います。そしてその情報アップ・ダウンの時は風通しの良い職場風土は大切です。しかしS氏が言うように職場風土が良くなれば良い戦略は出てきて会社は良くなると言うのは違うと思います。大きな戦略は視座、視点が高く、未来の環境変化情報に敏感で、自社を取りまく状況の視野が広く、社会の情勢、自社の状況を理解が深い、高度な能力、スキルを持った人間しか良い戦略はできないと思います。最近、戦略に困った経営陣が現場でお客に接するセールスや、サービスマンにお客の声を直に取れるのは君たちだから、君たちが現場から戦略を作って欲しいと指示を出します。しかしそれは無理です。彼らの本来の機能は売ること、修理することです。

戦略の実行のコンサル、研修をしていて私の大きく影響を与えてくれた、強烈なリーダーたちのそのバトルを思い出しました。ちなみに富士フイルムは、大きな変革を実行、成功、ゼロックスまで傘下にいれ経営は順調です。いっぽうS氏の会社も実行経営者は変わりましたが、風土改革の需要は大きく、ビジネスは堅調のようです。まあ大人げもなくケンカする必要もなかったと思いますが、お二人のエネルギーはすごかったです。

それでは、チュース!!

184.トップダウンとボトムアップ、中間管理職の役割

私が長く勤めた富士フイルムの、印刷部門は高度な技術力・開発力、安定した品質、十分な生産能力、強力な販売ネットワークにより、ビジネスモデルが長期にわたって安定していたため、強烈なトップダウンで組織が効率的に無駄なく回っていました。まさに軍隊方式で、指示されたことを素早く実行に移せて大きな成果をあげていました。自分で考えた余分な言動をすると「何も考えるな、言われたことをやればいい。考えるの俺ひとりでいい」と恐い上司から怒鳴られることもありました。実際には社員の思考停止の状態です。何も変化のない状況ではこのやり方はありだと思います。考えなくていいのは、ある意味楽できます。

しかしトップダウンだけでは、限界があります。戦略実行の結果、現地、現物に起る事実の変化に弱いのです。現場の事実は前提に沿ったものに変えろという指示まで出ることもあります。

一方、風土改革のコンサル会社の頃は、その真逆で戦略の上からのトップダウンより、社員が働く職場風土さえ良くなれば、社員の自発的、内発的、能動的な態度、姿勢になり、結果良い戦略は生まれ、業績も上がるという哲学でした。しかしこれも戦略なしでは、会社の事業の方向は見えなくなり、社員の働く幸福度はあがりますが、会社業績は不振に陥る結果になり、根本がおかしくなってしまいます。それで倒産した会社も見てきました。

私の理想は、下図のように上から下に戦略がスムーズに流れ、戦略実施の結果、それについて下から現場、現地感覚の事実のボトムアップがなされ、その結節点にいる中間管理職がそれをうまく上にフィードバックでき適宜戦略が修正、実行されている状態です。いつもローリングしています。一度決めたからと言って頑なにそれを守ろうとはしません。柔軟です。また横にいる他部門とも連携を取り、お互いが踏み込んだ協力関係ができている状態、こうなると現実的な、適確アクションが随所で取られ続け、会社はうまくワークして行きます。

それでは、チュース

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180.軍隊式、精神論のマネジメントはトップダウンの一方通行になる

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」は、江戸時代後期、に米沢藩主の上杉鷹山が家臣にこの歌を教訓として与えた話しは有名であり、日本人の精神論の主役にいます。この歌は日本人は大好きですが、気になるのはすべての責任を人に押し付けていることです。これだと、できなければ、担当者は切腹するしかありません。

日本の会社は基本的にタテ社会であり、トップダウンで上からの指示はあっという間に伝わるところはまだ多いです。特に強力な製品、商品、ビジネスモデルのあるところは、未だにこの傾向は強いです。大学の体育会の伝統はまだ強く残っています。今でも体育会野球部で4年間球拾いをしていた人は就職に有利と言われます。理由は言われたことは、文句も言わずに「ハイ」と言いますし、不条理な指示、命令にも従います。時には殴られても文句は言えない経験をしています。日本の会社はグローバルな近代的な会社、組織運営に変わったと見られがちですが、中にはパワハラ寸前か、完全なパワハラマネジメントをしている会社もまだあります。

日本の大手の会社は完全に使用者側が強気でいられます。何を言われても社員は、転職することの難しさ、転職した時の経済的不利、自分のブランドの劣化を知っていますから、なんとしても会社にしがみつこうとします。たちの悪い上司は、それを知っていますから、灰皿を投げる(さすがにこれはなくなりました)、ファイル・書類を投げつける、机を拳で叩いて脅す、びんたをくらわす、回し蹴りを入れるなどの物理的暴力をふるいますし、「おまえの生殺与奪の権利は俺が握っている」「嫌ならすぐやめろ、おまえの替わりはいくらでもいる」「おまえは、単に交換可能な消耗品にすぎない」等々の言葉の暴力で部下の全人格否定もしてきます。
メンタルになったり、普通の病気になっても、それは本人の自覚の問題だと言って逃げる人もまだいます。こんな組織では、社員はびびりまくって、縮こまっています。実際にまだそういう職場もあります。実際にパワハラをしている上司は、俺はもっとひどいことをされたんだと反省の気持ちもありません。

こういう精神論が支配されたトップダウンだけの組織でどういうことが起きるか。
・上が会社の方針、戦略、戦術、目標、売り方、やり方のすべて細かいことまで決めて指示する
・上は自分が一番経験があり、情報、知識も持っているから自分が決めて、下は実行すれば良いと思っている。
・下は指示されて従うだけ、何か言ったら、口ごたえしたと思われ上の心象を悪くするので何も言わない。前号のブログで言った、こなし、さばき処理に徹して、自分では考えなくなる。
・下から何か言われても、上は自分の上の命令なんだから、おとなしく聞けという。

それでは、どんな組織が望ましいか。これは上のミッション、役割であり、その環境を作って欲しいのですが、それは働く人と起きている事実を大切にするマネジメントでトップダウン+ボトムアップがスムーズに流れ、対話が十分にされる組織です。このような組織では、
・大枠の理念、ミッション、方針、方向性は会社が決めるが、それからのブレークダウン、具体的プランは現地、現場できめる。
・部下に当事者意識が生まれ、自分たちで最善の方法を考える。
・部下の責任は上が取る。
・問題が起きた時には、人の責任追求だけにせず、何故起きたか、仕組みから原因追究、対応策を考える。
・幹部は、ミッション、ビジョン、将来を部下に熱く語る伝道師の役割である。
・考える、対話する、相談する風土が生まれる。

やっぱり、活力ある組織は後者であり、マネジメントは目指していくべきです。そのほうが、中・長期的成果は大きいですし、なにより人が育ちます。

それでは、チュース