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397.小平奈緒が金メダルを取れたターニングポイント

先日の女子スケート500Mで小平奈緒が金メダルを取ったニュースは日本中を興奮させました。彼女は長野県茅野市郊外の豊平小学校の出身、そのあと地元の中学、高校そして信州大学に進みました。私の山小屋が同じ豊平地区にありその時いたので、地元は大盛り上がりで当日は地元公民館に大型スクリーンが設置されたり、金メダルのあとは小学校に大きな横断幕、市庁舎、駅にも垂れ幕がかかりました。茅野市にとっては、縄文遺跡からの国宝2点、縄文のビーナス、仮面の女神の指定につぐビッグニュースになりました。連日地元の放送局は彼女のことで持ちきりでした。

しかし彼女のここまでは、けっして平坦なものではありませんでした。大学は出たものの、リーマンショックの直後であり、また長野県内で大学の時のコーチの指導が受けられること、年間1500万円の援助は必要なことを条件にしたため、受け入れてくれる長野県の企業はなく、卒業時になっても就職先が決まっていませんでした。ようやく松本市内の相澤病院の院長が地元で頑張っている若者支援ということで損得抜きで援助してくれ、今も続いています。しかし頑張ったものの前回のソチ五輪では、500Mは5位とメダルは届かず引退も考えたようです。しかしここで転機が訪れます。2年間のスケート強豪国オランダへの単身留学です。ここで「怒ったネコになれ」という今までの低すぎる姿勢から少し姿勢を起こしより自由なフォーム変更などの技術面の指導も受けました。しかしそれよりメンタルが圧倒的に強化されました。オランダ語もわからず、食事も合わない。牛舎を改良したアパートには冷凍庫もなく、足首を捻挫した時は、毎日コンビニに氷を買いに行って自分で治したそうです。誰も助けてはくれません。かなりハングリーにならざるを得ない、追い込まれた状態です。

ここで彼女は今までの自分は恵まれた環境の中でやっていた、指導を受けていた。だからメダルを取って恩返しをしないといけないという優しい、弱い気持ちだったと気づいたそうです。しかしこの時から本当に勝ちたい、金メダルを心底取りたいという強い気持ちに変わったそうです。やることは変わらなかったようですが、自分の勝ちたいというコミットメントが強烈に湧いてきたそうです。彼女はレースに勝った時、自分のことを求道者と言い、解説の清水宏保が彼女は悟りを得たと言っていました。その中味は、やることをやったのだからなんとかなるという開き直り、余裕、自分の出来ることに集中、コントロールできないことはほっておくことと言っていました。体力的には下降線になる31才にして金、銀を取れたのは、メンタル、精神面が強くなったからだと思います。彼女は500Mのスタートの時、足がビクッと動きフライング懸念からスタートが若干遅れました。しかし全く動揺することなくスピードを上げ、後半のトップスピードは見事なものでした。

レース後は自分への称賛より周囲、サポートしてくれた人への感謝、負けた韓国選手への寄りそう姿勢、言動、そして失礼な言葉で質問するテレビインタビュアーへの大人対応、など人間的な成長を、スピードの技術の成長以上に感じました。やはりターニングポイントはオランダへの留学でハングリー辛い中で、勝ちたいという気持ちが強烈に起きたことだと思います。

それでは、チュース!!