前回のブログで、戦略、中期計画を作っても実際には実行されないものが多い、なぜそのような形式的なものを時間とお金をかけて作っているのか、あれからずっと考えていました。
そして戦略、中計に限らず、日本の会社経営の中では、理念、社是、ミッション、ビジョンなどは、社長室や来賓応接室の立派な額に入っていますが、それを覚えている人は社員は少なく、それと日々の仕事にはほとんど関係がないという会社が多いのではないでしょうか。
では、何故そのようなものを、作るのか。会社というものは煎じつめれば、利益追求集団です。もちろん社会の公器ですから、顧客、株主、従業員、関係各社のためという大義はありますが、利益を生み出すことができなくなれば、会社は存続できません。ずいぶん前のブログで、米国のDupontは、事業部の経常利益が3年連続で10%を切れば、事業撤退のルールがあり、そうならないため幹部は収益を上げるために必死になって戦略を作り、実行して行きます。もしできなければ、そのマネジメント陣は首です。しかし利益を上げれば大きな報酬が得られます。そういうインセンティブが働いています。しかし、日本の会社では、戦略はありますが、その内容の実行はあまり問われず、短期の成果だけが注目されますので、現業の慣れた仕事を、はたから見えるように一生懸命やったほうが、頭を使わず楽ですし、リスクも少ないので、中長期の難易度の高い戦略の実行より、短期で成果の出る業務に走るのではないでしょうか。Dupontのような厳しいハードルを上げている会社もないでしょう。また人事異動も頻繁にあり、中期計画の最終年度には自分はいないと思っている人も多いでしょう。やはり欧米系に比べると高い目標、戦略実行についてはゆるいと思います。
また、多くの中期計画は、先を見た大きな事業部戦略の具体化ではありません。トップの任期に合わせた全体の売上、利益目標が先にあり、それが各事業部に割り当てられます。当然延長上やなりゆきでは、達成できない数字ですから、実体と目標のギャップを埋めるための新規事業や新製品をその段階で考えないといけません。戦略というのはそのギャップフィルの方策というところも多いと思います。数字ありきの中計ですから、数字だけ帳じり合わせをすれば、OKとみんなが考えるのも自然かもしれません。
かくして、戦略、中計とは、各事業部が上げてきた数字とそのギャップフィル対策を、企画部でホッチキスで留めただけのものなってしまうのです。それで回っていくなら、それでもいいのかもしれません。
これは、日本人得意の「建前と本音」の、好事例なのかもしれません。表向きは大義に基づいた、未来志向風プランですが、実行になると従来のやり方の踏襲というものになり、なんでもいいから数字合わせに奔走する。これで中計を達成できるのですから、これはこれでたいしたパワーだと思います。しかしいつまでも同じやり方では続かないというのも歴史が証明してきているところです。絶対に本気にならなくてはならない時期がきます。それは早めに準備しておいたほうがほんとは良いのです。
余談ですが、先日、外国人社員のセミナーで「建前と本音の」の話をしたところ、全員から「なんでそんな、意味のないことをするのだ。非効率だし、意味がないだろう。」との集中砲火を受けて、納得は無理でしたが、日本社会はそういうものだという理解をしてもらうのに1時間かかりました。我々にとっては普通のことですが、外から見ると異様なようです。
結局のところ、本当の事業戦略は、必要になるまで本気で実行にする気運になるまで作る必要はないと私は思います。実行されないとわかっているなら、それなりの美しい体裁を作っておけばよいし、細かいアクションプラン不要でしょう。ばくっとした、抽象レベルの高い課題形成で良いのかもしれません。当然ですが、周囲からは本気で作っているように見られるのはmustです。不要なもめごとに時間とエネルギーをかけるのは避けるべきです。
いずれ本気モードになった時、それは少しは参考になるかもしれません。しかしその時点では環境は大きく変わっていますから、スクラッチからの戦略作成になると思います。
それでは、チュース