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165.実行しない戦略、中期計画は本気で作らなくていい

前回のブログで、戦略、中期計画を作っても実際には実行されないものが多い、なぜそのような形式的なものを時間とお金をかけて作っているのか、あれからずっと考えていました。

そして戦略、中計に限らず、日本の会社経営の中では、理念、社是、ミッション、ビジョンなどは、社長室や来賓応接室の立派な額に入っていますが、それを覚えている人は社員は少なく、それと日々の仕事にはほとんど関係がないという会社が多いのではないでしょうか。

では、何故そのようなものを、作るのか。会社というものは煎じつめれば、利益追求集団です。もちろん社会の公器ですから、顧客、株主、従業員、関係各社のためという大義はありますが、利益を生み出すことができなくなれば、会社は存続できません。ずいぶん前のブログで、米国のDupontは、事業部の経常利益が3年連続で10%を切れば、事業撤退のルールがあり、そうならないため幹部は収益を上げるために必死になって戦略を作り、実行して行きます。もしできなければ、そのマネジメント陣は首です。しかし利益を上げれば大きな報酬が得られます。そういうインセンティブが働いています。しかし、日本の会社では、戦略はありますが、その内容の実行はあまり問われず、短期の成果だけが注目されますので、現業の慣れた仕事を、はたから見えるように一生懸命やったほうが、頭を使わず楽ですし、リスクも少ないので、中長期の難易度の高い戦略の実行より、短期で成果の出る業務に走るのではないでしょうか。Dupontのような厳しいハードルを上げている会社もないでしょう。また人事異動も頻繁にあり、中期計画の最終年度には自分はいないと思っている人も多いでしょう。やはり欧米系に比べると高い目標、戦略実行についてはゆるいと思います。

また、多くの中期計画は、先を見た大きな事業部戦略の具体化ではありません。トップの任期に合わせた全体の売上、利益目標が先にあり、それが各事業部に割り当てられます。当然延長上やなりゆきでは、達成できない数字ですから、実体と目標のギャップを埋めるための新規事業や新製品をその段階で考えないといけません。戦略というのはそのギャップフィルの方策というところも多いと思います。数字ありきの中計ですから、数字だけ帳じり合わせをすれば、OKとみんなが考えるのも自然かもしれません。

かくして、戦略、中計とは、各事業部が上げてきた数字とそのギャップフィル対策を、企画部でホッチキスで留めただけのものなってしまうのです。それで回っていくなら、それでもいいのかもしれません。

これは、日本人得意の「建前と本音」の、好事例なのかもしれません。表向きは大義に基づいた、未来志向風プランですが、実行になると従来のやり方の踏襲というものになり、なんでもいいから数字合わせに奔走する。これで中計を達成できるのですから、これはこれでたいしたパワーだと思います。しかしいつまでも同じやり方では続かないというのも歴史が証明してきているところです。絶対に本気にならなくてはならない時期がきます。それは早めに準備しておいたほうがほんとは良いのです。

余談ですが、先日、外国人社員のセミナーで「建前と本音の」の話をしたところ、全員から「なんでそんな、意味のないことをするのだ。非効率だし、意味がないだろう。」との集中砲火を受けて、納得は無理でしたが、日本社会はそういうものだという理解をしてもらうのに1時間かかりました。我々にとっては普通のことですが、外から見ると異様なようです。

結局のところ、本当の事業戦略は、必要になるまで本気で実行にする気運になるまで作る必要はないと私は思います。実行されないとわかっているなら、それなりの美しい体裁を作っておけばよいし、細かいアクションプラン不要でしょう。ばくっとした、抽象レベルの高い課題形成で良いのかもしれません。当然ですが、周囲からは本気で作っているように見られるのはmustです。不要なもめごとに時間とエネルギーをかけるのは避けるべきです。
いずれ本気モードになった時、それは少しは参考になるかもしれません。しかしその時点では環境は大きく変わっていますから、スクラッチからの戦略作成になると思います。

それでは、チュース

100.戦略とは何か

いまさらですが、きょうはこの定義をしてみます。
戦略は、もともと軍事用語で「戦場において勝ち残るための謀(はかりごと)」です。

私は、孫子の兵法で言っています
「戦争には勝つ理由と負ける理由が必ず存在し、敵に対してみずからがいかに 優位な立場を築くこと、築き続けることができるかが重要である」が一番気にいっています。
敵に対して自軍が優位な状況を作り出し、その状態をいかに続けられるかを考え、実行していくことであり、1回限りのものは少なく、ずっと継続していくものです。敵国との関係で、敵が完全に消滅してしまえば終わりですが、現実にはそんなことはなくいったん退却してもまた力をつけ、タイミングを見て反撃してくるのが常です。反撃させない手を打って行くことも戦略です。

経営戦略とは、企業の置かれている「経営環境」を戦場に見立てて、その環境下で、企業が目的、事業継続、利益創出、成長、雇用確保、社会貢献等の目標を達成する打ち手を考え実行していくことです。この中で一番のテーマは事業継続=Going concern どうやって生き残っていくか、勝ち残っていくかが最大課題です。

そのために企業・経営者は常に次のことを考えていきます。
(1)環境の変化に対する自社の立地戦略を考えます。  良く言うポジショニングです。
  魚影のあるところに網を張らないとだめです。水たまりで釣りをすることは無益です。
(2)経営資源の棚卸をいつも行い、自分の経営資源の見直しによる取捨選択、経営システムの構造改革を絶えずしていく必要があります。
(3)経営理念や過去の価値観や体験に基づいた組織文化、組織風土を作っていきます。

組織価値観のパラダイム変換と、それを実行するために必要な学習とコミュニケーションの場つくりによる個人のモチベーションを上げていきます。

短いフレーズで「経営は先を見る目と、人を見る目」と言いますが、じれはダーウィンの有名な言葉「環境の変化に対応できる生物だけが生き残る」を経営に置き換えたものです。世の中の先を見て、変化を見て未来がどうなって行くか読みます。その未来のニーズを察知しそれを満足させられるビジネスを構築していきます。つまりそのビジネスができる組織、人を取り入れ、育成していきます。まずは良い人を見抜くことが採用が一番大事です。

戦略は戦いを略する。つまりできるだけ無用な戦いはしないという意味もあるそうです。

それでは、チュース

8.D社とF社の戦略の考え方の違い

前回に、戦略は強みを世の中の流れにぶつけること と言いました。戦略についての私の体験をひとつご紹介します。私は20年近く前に富士フイルムが米国のDupontと一緒に買収した英国の会社の戦略策定会議に富士フイルム側のスタッフで参加していました。この席上でのDupont(D社)と富士(F社)の考え方の違いは明白でした。全員有名大学のMBAホルダーのD社スタッフは、将来の対象市場を予測し、収益の出ない製品は撤退すべきの意見、F社の参加メンバーその業界・市場の詳細まで経験して熟知、なんとか業界で使える製品をその会社から出し続けることが大切の意見でした。両社の意見は縮まらず、結果F社がD社の持ち株を全部引き受けました。10年経って見ると、D社が主張しそれを自社で行ったビジネスは収益を上げ続けて行き残り、F社が引き受けた英国の会社は現地マネジメントにMBO(売却)しました。会議をしている時はD社スタッフは、将来予測の推定データ、(assumption)から論理を展開、F社は業界の知識、経験から論理展開しました。F社の業界への想いは強かったです。

私は日本企業には戦略がないと常々批判する競争戦略の権威ポーター先生には同意できませんが、この時は負けたと思いました。

D社には社内規定で3年間連続して経常利益が10%を下回る事業は自動的に撤退という規則があるとD社スタッフから聞きました。D社は当時10兆円の売上のある大企業で、この事業は全体で3000億円程度、彼らにとっては全体の3%に過ぎない小さな事業、その一部のM&A会社は取るに足らないものだったはずです。しかしF社にとってその事業は売り上げ全体の3割近い大きな柱であり、その事業に直接関与するそのM&Aした会社をすぐに引き上げるわけにはいかなかったのです。D社のビジョン・戦略への考え方は壮大です。19世紀初頭に米国に移民したフランス人が創設した会社で、戦争の盛んだった19世紀は爆薬、20世紀は化学、21世紀は食糧・エネルギーと大きな流れになる産業に自社ドメインをダイナミックにシフトしていきます。現在持つ化学の有力会社も既に分社化にして、いずれ手放すでしょう。私の事例だけからでは少々飛躍しますが、欧米の会社と日本の会社の戦略のダイナミックさの違いはどこからくるのでしょうか。私は、欧米の会社は必要な技術と人は必要に応じて外から買ってくれば良い。だからスピードが速い。に対して日本の会社は技術と人材は自前でじっくり、大切に育てるものである。だからゆっくり流れに任せていく。さらにこれからのグローバル化で避けて通れない、自国以外の会社をM&Aした時にも欧米と日本では対応に差があります。M&Aの目的が時間と技術、販売ネットワークを買うのは同じですが、欧米の会社は人も一緒に買って、そのままマネジメントしていきます。日本はマネジメント方法が欧米と違うこと、日本本社は日本人しか信用しないので、マネジメントのやり方と日本人駐在員をM&Aをした会社に送り込んで、日本式のマネジメントをしようとする。それによってローカルスタッフのモチベーションダウンや離職が多く起こり、M&Aをした会社の実力が十分に発揮しきれていないのではと思います。日本から工場ごと丸ごと輸出する場合や、日本から輸出する製品に力がありその販売だけを任せる時は日本式マネジメントは効果を発揮しますが、現地の状況を理解しながら、マーケティング、製品開発・製造を行い、現地で儲かる仕組みを作り、実行していくならば、日本式マネジメントだけでは機能しません。日本本社の戦略・ビジョンと祖語が出てはいけませんが、実行においてはローカルの風土にあったマネジメントして、ローカルスタッフも力を最大限に発揮させることが大切です。

それでは チュース。