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417.富士フイルム 米ゼロックス買収の誤算

5月1日にゼロックス大株主ディーソン氏が起こしていたゼロックスの買収差し止め訴訟の仮処分がNY裁判所から発表され、富士フイルムへの米ゼロックス売却を決定した米ゼロックスCEOの決定は会社に不利益を与えるとして仮処分で無効とされました。米ゼロックス経営陣は上告して戦う決定をせず、株主との和解を発表、訴訟を取り下げるかわりに株主の推薦する6人の取締役受け入れとCEOを含む7人の現経営陣の退陣、富士フイルムとの合意の解消、修正を発表しました。米ゼロックスは事実上買収合意を放棄したのです。

ブログ391.富士フイルムの野望実現、393.富士フイルム、ゼロックス買収の勝者はゼロックス経営陣、で述べたように、この買収は、大義名分は別にして富士フイルムの会長の野望とゼロックスCEOジェイコブソン氏の個人的利害が一致した蜜月関係の中で成立しました。この買収合意反故は、富士フイルム大変革を成功させた古森会長にとって、初めての誤算、挫折だったと思います。大株主2人が買収反対訴訟を起こしても委任状決戦まで元CEOは戦うと読み、決戦になれば勝てると踏んでいたはずです。しかし欧米、特にアメリカの株主は日本の持ち合いの株主と違い、会社は個人株主のものと確信しています。もの言う株主です。そこが欧米の大企業のマネジメント経験のない富士フイルムは読み違えたかもしれません。

銀塩写真フイルムが消滅した時、富士フイルムが勝ち残り、コダックが消えた違いは、莫大な内部留保・キャッシュの差が大きかったです。日本の株主は会社持ち合いで内部留保を将来の研究開発、投資のために許しますが、アメリカの株主は許しません。キャッシュがあれば株主配当を強く要求、実現させます。富士フイルムが勝ち残れたのも内部留保からの大胆な研究開発、40社のM&Aができたのです。古森会長のモットーは、乾坤一擲の勝負に勝つこと、自分にはその勝負に勝つ強運を持っていること、ビジネスはパワーゲームである、です。そのモットーで今まで勝ちきってきましたから今回の買収合意の反故は大誤算です。許せません。

これから、米ゼロックスとの交渉は非常に難しいものです。古森会長は旧経営陣との合意は一度OK出したのだからそのまま履行せよと主張しますが、新経営陣は買収自身がNoですから、双方合意の妥協点を見つけるのは難しいことに間違いないです。米ゼロックス新経営陣の要求はプライドの塊で面子を何より大切にする古森会長は飲めないことでしょう。アメリカの魂とも言える会社の買収、ロックフェラーセンター、ペブルビーチのゴルフ場、ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントなどはなかなかうまく行きません。ゼロックスもアメリカ代表企業として燦然と輝いていました。その企業が日本の会社の軍門に下るのはアメリカ人にとって感情的な反発もあると思います。裁判所の判定はそういうところも加味されていたと推測します。

しかしこの買収案件が最悪、なくなっても元の関係に戻るだけです。富士ゼロックスの親会社の株主として富士フイルムが75%、ゼロックスが25%の関係に戻るだけです。それぞれが従来のフィールドで独自に頑張っていけば良いだけです。不謹慎ですが、富士フイルムにしても日本式のやり方では、アメリカの名門企業をマネージしていくのは大変です。

米ゼロックス買収発表の席上、古森会長は世界の事務機市場を変えていく、富士は一円も自分のお金は使わないでこの買収を成立させたと自画自賛していました。絶頂でした。ですから今、古森会長は怒り心頭であること間違いなく、連休中ですが関係者全員が出社して対応策に苦慮しているはずです。富士は原案通り、米ゼロックスは解消の立場ですから、決裂していくでしょう。米ゼロックス経営陣はそれを望んでいますから、話し合うにしても法外な要求をしてくるでしょう。富士も上訴するか、契約破棄の訴訟を起こすかもしれませんが、ますます関係は悪化しますし、米ゼロックスはアメリカで戦う訴訟は勝てると思っているでしょう。相手が日本の会社ですから。
これがリアルで過酷なグローバルビジネスです。古森さんはよく私にグローバルビジネスの相手は利害だけで動く、絶対に相手を信じるなと言っていました。今回は信じた相手が株主からの訴えで、自分を裏切りあっけなく白旗を上げたのですから相当なショックです。古森さんは外見、豪放磊落、強面にみえますが、内面は繊細、デリケートで気にするところもあります。そして激高しやすく、高齢ゆえにとても心配です。きょうの富士フイルムの米ゼロックス買収頓挫は、グローバルM&Aの難しさを物語っています。

このブログを書き終えたところ、たったいま富士フイルムは米ゼロックス買収を差し止めた米NY裁判所の仮処分決定を不服として上訴する方針を発表しました。米ゼロックスと大株主の和解を承認しない異議申し立てもするようです。買収計画推進のため法廷で徹底抗戦するようです。古森会長の強気は健在です。まだまだあきらめないようです。

それでは、チュース!!