カテゴリー別アーカイブ: 海外ビジネス

393.冨士フイルムのゼロックス買収の勝者はゼロックス経営陣ではないか?

ブログ391.で今回の買収で冨士フイルムの野望実現ということ書きました。確かにゼロックスを支配することは長年の古森会長の熱い想いだったと思います。しかしこの買収は富士フイルムにとって、ビジネス上の本当に成功かというと、古森会長の得意満面の顔と「ゲームチェンジだ」との強気の発言とは裏腹に疑問が残ります。経営、戦略で最も大事なのは、企業立地で、時代の流れに乗ることです、漁師がどこに網をかけるかに似ています。ゼロックスの1970年台、1980年台は複写機の他にコンピュータでもアップルや、マイクロソフトよりも先端を行っていました。まさに世界をリードしていた会社です。しかしコンピュータの小型化戦略で敗れ、複写機、事務機に戻らざるを得なくなってから、凋落が始まりました。複写機の市場はデジタル化で縮小、競合も多数でてきました。そこで、2000年に富士ゼロックスの持ち分の50%のうち25%を冨士フイルムに譲渡、そして今回、冨士フイルムにゼロックス本体を売却(50.1%の株式)、支配権を譲りました。ここ数年、ゼロックス本体の業績は悪化し続け、マネジメントは窮地に陥っていました。自分たちのボーナス、給与も保証できなくなってきました。そこで考えたのが、ゼロックスの冨士フイルムへの売却です。これで、ゼロックスマネジメントは豊富な買収資金を手にし、子会社になった好調な冨士ゼロックスからの配当も当面入ります。この売却ビジネスプロセス成功により、ゼロックスマネジメント上層部は、多額なボーナス、桁外れの退職金を手にして辞めていくでしょう。自分たちの面子もたち、実も取る実に見事な戦略の結果です。今回の勝者は彼らだと思います。

このあと起こることは、ゼロックスの優秀な技術者たちの退職です。彼らも十分なボーナスと、退職金を手にします。少し時代遅れでも複写機の技術は残るでしょうが、優秀なエンジニアは去りますので、あらたな開発、進化はできないでしょう。そうなると、子会社になった富士ゼロックスから、大量のエンジニアを本体に派遣、開発を続けなければなりません。これは富士ゼロックスにとっては相当な負担です。冨士ゼロックスは従業員の2割、1万人のリストラも行われますから、当然士気も落ち、優秀なエンジニア、社員も流出します。これは、かなりの危機的な状況です。この中一番たいへんで、苦労するのは、この買収成功の使命を受けて日本からゼロックス本体に送り込まれる、富士フイルムの役員、社員であることは間違いありません。

言う事を聞かない、残ったゼロックスのマネジメント陣をコントロールするのは至難の業です。今までの冨士フイルムにはなかった経験です。しかし古森会長からは、この買収は絶対に失敗は許されないという厳命が派遣される日本人には課せられますから、板挟まってしまいます。まさに試練の日々が続くことが予想されます。

実は、冨士フイルムは今から、30年前に全く同じような買収をしました。これには私も深く関与したので良く知っていますが、印刷関連で当時、最先端の画像処理機器を持った英国のクロスフィールド社の買収です。当時、材料しか持っていなかった冨士フイルムは、同じ材料会社の米国Dupont社と高額を出し合って買収しました。冨士から見たら絶世の美女で、声もかけることもできないためらう相手でした。しかし大喜びで買収してみると、持っている技術は既に時代遅れで、その後印刷業界の主流になったDTPには使えないものでした。社内体制もボロボロ状態、そしてわがままでプライドの高い英国人のマネジメントは、日本人には不可能で、不満を抱いた英国人マネジメントは高額の退職金を手に次、次と辞めていき、技術者も続々やめていきました。その後Dupontの持ち分株式を買い取った冨士は大量のエンジニアを日本から送り込みました。結局は再興することができず、10数年前に持ち出しでマネジメントバイアウトを行い決着をつけました。大きな授業料を支払いました。今回の買収は、その時のことが、デジャブのように思い起こされました。

もちろん、これは私のネガティブな推測で、冨士のマネジメントはそれらは織り込み済みでの決断だったと思います。前回のブログでも書きましたが、ロジカルには正しい判断だったでしょうが、これをプラン通り実行するのは、本当に大変な仕事です。私の冨士フイルムの後輩にあたる誰かが、この重責を負うのでしょうが、覚悟を決めてやるか、できなければ最初から逃げ出したほうがいいでしょう。それほど困難な仕事だと思います。

それでは、チュース!!

391.富士フイルムの野望実現と富士ゼロックス社員の嘆き

昨日、富士フイルムホールディングが米ゼロックスを買収(株式50.1%取得)、現在子会社になっている富士ゼロックスを米ゼロックスの100%子会社にして経営統合すると、いう発表をしました。今年7~9月にはそのプロセスを完了するそうです。目的は、世界のコピー機需要減への対応で、言いかえれば統合による重複機能のリストラ、富士ゼロックスは2020年までに国内外で1万人、従業員の2割を削減するそうです。経営難に陥っていた米ゼロックスは歓迎し、アジア、オセアニアに販売限定されていた富士ゼロックスが米ゼロックスとの統合によりグローバルで効率的な営業展開ができるメリットは富士フイルムホールディングにあります。古森会長は「極めて価値創造的な統合」と意気込んでいます。コピー市場は縮小が続き、世界規模でのな改革はマクロ的に見て正しい判断です。

この統合の伏線は、昨年6月に起きた、富士ゼロックスの海外現法不祥事をきっかけに、富士フイルムホールディングが経営陣を富士ゼロックスに送り込み、実質的な富士ゼロックスのガバナンスを取ったことにあります。(ブログ、326.富士フイルムと富士ゼロックスの微妙な関係)これにより今回の両社の統合が可能になりました。そしてこれは、56年前に米ゼロックスからの支援で複写機事業を始めた富士フイルムと米ゼロックスの立場を完全に逆転させた象徴的なできごとです。富士フイルムにとってこれは長年の夢でした。これにより、売上規模2.1兆円の世界最大規模の複写機、事務機、デジタルプリンティングの事業を傘下にできたのです。古森会長が実行した、銀塩フイルムからの脱却、新しい事業ドメイン創出に加えて、新しい輝かしい成果が加わりました。昔から自分は強運だと豪語していましたが、まさにその通りです。

しかし、視点を富士ゼロックス社員に移すとそこは暗澹たる気持ちの人で充満しています。2000年までは、富士フイルムと富士ゼロックスは同列でした。2000年以降冨士フイルムホールディングの子会社にはなりましたが、まだ1段下です。2000年以降も冨士ゼロックスのビジネスは堅調で、銀塩フイルムがなくなったあと、化粧品や医薬品がメディアでは脚光をあびていますが。冨士フイルムホールディングの利益を支えていたのは冨士ゼロックスでした。そこに冨士ゼロックス社員の誇りがあり、経営陣は昔のゼロックス人材で冨士フイルムから送り込まれた人は実権がとれないまま去っていきました。環境が激変したのは、先程言った富士ゼロックスの海外子会社の不祥事でこれによりガバナンスを冨士フイルムが取りました。そして今回の統合なりました。これは富士フイルムから見て2段下です。完全に差をつけられました。富士ゼロックス社員からすれば、自分たちはずっと真面目に日本、アジアでビジネスを続け業績を出し続け、冨士フイルムにも長い間貢献してきた。何も悪いことはしていない。それなのになんで今回の米ゼロックスとの統合で1万人もリストラされなくてはいけないのか、理不尽、不条理ではないかと表にはだしませんが、内心、強く思っています。しかしこれはマクロ的な経営判断ですから、粛々と進んでいきます。これが現実ビジネスのドライな世界です。海外不祥事さえなければと、冨士ゼロックス社員は思ってもしょうがないのです。その時、このシナリオは冨士フイルムの中に出来上がっていたと思います。冨士フイルムにとってはあの事件が冨士ゼロックスのガバナンスを取れるチャンスだったのです。

私は、米・冨士ゼロックス統合の課題は、次のようなものだと思います。

1.冨士ゼロックスのリストラ、これは古森会長が信頼するリストラのプロが富士ゼロックスに送りこまれていますから、問題なく進むでしょう。富士ゼロックス社員に不満はあっても従うしかありません。多少の軋轢は生まれますがいずれ解消するでしょう。富士ゼロックスは親会社が米ゼロックスになったほうが、従来の親密な関係性が発揮され、富士フイルム直接よりは仕事はやりやすくなるかもしれません。

2.米ゼロックスのガバナンス、米ゼロックスのキーポジション、もしくはトップには古森会長の秘蔵っ子の若手役員が送り込まれるでしょう。しかし冨士フイルムにとってもこれほど、大きな企業買収、それも癖のあるアメリカトップ企業のマネジメントは初めてです。ソニーをはじめ多くの名だたる日本企業がアメリカ企業のガバナンスに失敗しています。冨士フイルム・古森会長流の超トップダウンが通用するか、これが最大の課題だと思います。彼らは買収された側は面従腹背です。知らないうちにかってにやります。古森会長は対話、会話は十分できますが、マネジメントではあえてしません。圧倒的なパワーでガバナンスをする流儀です。それで今まで成功してきました。今回も通用するか、どうかが正念場です。日本企業はアメリカ企業のM&Aはできますが、マネジメントは苦手なのです。しかも過半数をわずかに上回る株式では、富士フイルムのやりたい重要戦略、施策がすんなり、米ゼロックス幹部、物言う大株主に通るとは思われません。

3.縮小する複写機、事務機、プリンター市場に今までにない、新技術、新製品、をタイムリーに導入、成功できるかです。冨士フイルム、冨士ゼロックス、米ゼロックスは固有の先端技術を持っていますが、これが統合され、シナジーを発揮して世界が驚く新製品を出し続けていけるかです。それがなければ、尻つぼみの縮小市場の巨大な負け犬になってしまいます。

古森会長はよくわからない、説明のできない強力なパワー、オーラと強運を持った、類まれな人です。きっとこの賭けも成功すると踏んで乗り出していったのです。彼は論理的な、理詰めで判断するのではなく、勘で意志決定する人です。ですから今回の結論も大丈夫だと思います。私の勘ですが。

それでは、チュース!!

349.海外でビジネスでは相手を信じすぎないこと

この言葉は欧州駐在時代の上司だった、現在富士フイルムホールディング会長の古森さんからいつも言われていたことでした。前回のブログで私は、いい人、使われるだけの人ではないと言いましたが、古森さんから見ると、私は人を信じすぎて騙される甘い人間のようでした。こちらが相手を信じれば、相手も信じてくれるという相互信頼は、表面上の応対辞令、マナー、エチケットとしては必要です。しかし経済合理性だけで成立しているグローバルビジネスでは、相手がいくらフレンドリーにしてきても、必ずその真意、悪く言えば裏を読み取り、それへの対応をきちんとしておかないと痛い目に会います。私の仲良くしている代理店に必要以上の便宜を図って、そのたびにお前はゆるい、人が良すぎると言われ、なぜ相手が親しくアプローチしてくるのか良く考えろと言われました。確かにその通りでした。

特に英国人は要注意です。社交と実態が違います。こんな話があります。英国人のしたたかさに比べるとドイツ人は純朴です。私がいたグローバル企業での国際会議で知り合った、英国人とドイツ人、親しく話していくうちに、英国人がドイツ人に今度ロンドンに来たら家に寄ってくれ、一緒に飲もう。それを信じたドイツ人がロンドンで英国人の家を訪問すると、出てきた英国人は、不機嫌そうに何をしにきた、といって追い返したそうです。なにか、京都のぶぶづけでもどうですか(そう言われたら帰れということ)に近いものがあります。英国人にとって、家に寄れは、家に来るなの意味なのです。それならそんなこと言わない方がと思うのですが、これは社交のルールですから外の人間が口を挟むことではありません。

私が英国の会社にダイレクターとして行った時に、会う人はみな表面上はスマイル、ウェルカムの挨拶はしてくれますが、裏では、私のことをあのフン族、バーバリアン、つまり野蛮人と最初は呼ぶ人もいました。そういうものです。

ロンドンの2流のレストランに行った時の横のテーブルの英国人夫婦の会話、出てきた料理を酷評、肉はゴムのように固い、野菜はしなびている、ソースに味がないと、言っていたのに、ウエイターが、お味はどうですかと聞くと、デリシャス、エクセレント、スーパー、ワンダフルを平気で連発、その二重性を見て恐い人たちだと思いました。

アメリカでも同じかもしれません。昔見たシガニ―ウェーバーのワーキングガールという映画の一場面、彼女は有名MBA出身でマンハッタンのM&Aの会社のキャリアウーマン、自分のところにアプローチしてくるビジネスやプライベートの案件を好き嫌いは別にして、ビジネスに関連してくるか、自分に得があるか、つまり経済合理性だけで見事に社交の表と実際の裏を使い分けていました。これは、日本人同士では、そこまでクールに割り切ってやれないなと思います。しかしこれは欧米では普通です。アジアではもう少し日本よりかもしれませんが、中国は欧米と同じです。

プライベートの関係まで発展すれば、欧米人といっても相互信頼ベースで良いですが、ビジネスレベルなら、経済合理性だけで動いています。そこは情が入る世界ではありません。好き嫌いは別にしてご注意ください。

それでは、チュース!!

338.IKEAの元幹部に成功の秘訣を聞いてみた

IKEAはスウェーデン発祥で総売上高4兆円のグローバルな家具企業、その成功本はたくさん出ていますが、先日IKEAの創業者に50年に亘って直接師事し、生産、広報、ITのトップを勤め、今はIKEA OB会の会長をしている Mr. Bo Franzen さんを知ることになりました。本に書いてないことで、私がこれが成功の秘訣なのではと思っていたことをストレートに聞いてみました。彼は忙しい中、丁寧に本質を突いた回答をいてくれました。それがきょうのテーマです。

私の質問は
1. IKEAの社員は何故、会社のため、自分自身のためにあんなに働くのですか、彼らを
動かしているものはなんですか?
2. IKEAの戦略、方針がマネージャレベルではなく、一般社員のすみずみまで浸透しているのはどうしてなのですか。

彼は、1、2を合わせた下記のような返信をくれました
これは、あなたの質問の答えになっていなかもしれない。ただ我々のカルチャーのベースになっていることは確かです。正確に、今日カルチャーがどのようにワークしているのか、将来ワークするのかはわかりません。それは現在、将来のマネジメントチームがいかにそのカルチャーを維持、伝えていくことができるかです。IKEAをユニークな存在にしているIKEAスピリットは創業者のInvar Kampradが最初築き、現在も有効に機能しています。IKEAはお互いのことを十分に知り合えるような小さな町で生まれ、そこでは仕事が毎日の生活の一部になっていました。最初のIKEAの家具店は1950年代、高品質な家具製品が求められる時代にできました。IKEAのモットーである「不可能なものは何もない」に加えて賢い決断によってビジネスは欧州そして全世界に広がっていきました。IKEAの組織はあらゆる階層でオープンに、何でも自由に本音で話すことができ、それがInvarの哲学「共に働こう」「共通のゴール達成のために努力しよう」「簡素にすること、単純化すること、コストを安くすることを考えよう」をすべての社員へ浸透することに役立ちました。ビジネスアイデアの基本である「多くの人が買える価格で、幅広いレンジにおいて良いデザインで機能的なホーム家具製品をオファーする」は、いつも社員に製品、ビジネス、彼ら自身を開発、開拓するように、チャレンジするように仕向けていきました。このことを通して、社員は働くことを楽しみと考えるようになり、自分たちが自ら開発に関わっていることが喜びとして実感でき、「IKEAは我々の会社である」という気持ちになっていきました。しかしそれは過去の話であり、現在は次のステージに入っています。人々は異なった価値観を持ち、ライフスタイル、社会は変わりました。それらを20世紀のそれと比較することはできません。マルチグローバルな大きな会社で伝統のカルチャーや価値観を維持していくことはたいへん難しいです。単純な答えをないでしょう。しかしそれに向かって一生懸命に働くことしかないでしょう。

実にIKEAの元幹部らしい、簡潔な回答です。私の質問への答えは上のなかに十分に入っていました。感謝です。どの国の人でも親切で、誠意ある人はいるものですね。
それでは、チュース!!

 

336.欧州No1セールスにその成功の秘訣を聞いた

私は欧州10年駐在中、私の関係したビジネスで100人以上の各国のセールスと一緒に仕事をしました。厳しいクレーム満載の仕事でしたが、その環境の中で、間違いなく一番の実績を上げた人がいて、その成功の秘訣を彼に聞く機会がありました。

彼は、次のことをいつも心掛け、実践していたそうです。
1. 客の言うことを心から聴き、客の立場、目線で問題を一緒になって考え、客の考えに同調した上で自分の意見を加えて、客をサポートする。客と深い対話をする。
2. 絶対に客に対して傲慢にならない。偉そうな先生にならない。
3. 常に正直であり、客に隠しごとはしない。
4. Quick response が何より大切、忙しいを理由に返事を遅らせてはならない。すぐに答えられなくても、何らかのレスポンスは客にすぐ行う。タイミングを逃すな。
5. 自分の会社、自分自身、製品に強い自信を持つこと。
6. 良い相互信頼できるチームを作ること

まあこれらは日本のビジネス書にも良く書いてあることですし、欧州も日本も成功のポイントか変わらないなというのが実感でした。しかし彼は自分が実践したことを経験の中からゆっくり話すのでリアリティがありました。確かに全部実践し、成功した彼の話には迫力がありました。要するにセールスの秘訣は古今東西同じですが、頭で理解するだけでなく、それを身につけて実行できる、やりきれるかが大事なことなのです。それは世界中どこでも同じですね。
それでは、チュース!!

310.海外ビジネスでは「信じる者は騙される」

東芝に続いて日本郵政もM&Aした会社が業績不振になり、本社に4000億円の赤字がブーメランとなって戻ってきました。半端な金額ではありません。日本で働く東芝、日本郵政のほとんどの社員は誠実に、まじめに仕事に一生懸命取り組んで利益を出そうと日々努力していますが、マネジメント能力のなさでそんな努力がいっぺんに吹き飛んでしまう巨額な金額です。私がいた富士フイルムもニュージーランドの子会社が220億円の粉飾をしたことが見つかりホールディングの3月の決算を延期しました。このようなM&Aに関わる失敗は、この数十年で山のようにあります。私も海外のM&A会社の経営や合弁会社の経験からこのような痛い経験はしました。赤字ではないですが中国の合弁会社では中国側が日本の根幹技術を盗み出し自分の開発したものとして居直るようなことも経験しました。新幹線の技術を丸ごと盗まれたような種類のものです。

日本の会社がこのようなことで失敗してしまう原因は何かと考えますと、日本人の美徳して、自分が誠実に相手に対応すれば、相手も同じように誠実に対応してくれると信じている傾向が強いからだと私は思います。自分がおもてなしすれば、相手もしてくれると錯覚しています。つまり相手を信じれば必ず相手もこちらに悪いことはしないと思いがちです。だから相手の言うことを鵜のみにして疑うことはほとんどしないのです。必ず双方にとって良い形で対応してくれると信じるのです。ちょっと引いて見ればわかるのですが、M&Aされるような会社は必ず見せられない弱点、欠点があります。それを見せないでうまくことを運ぼうと必死になっています。私はグローバルビジネスにおいて相手をやみくもに信じるのは間違いだと思います。相手の言うことまず信じない、疑え、良いことを言っても裏があると思ったほうが良いのです。私の場合、それほど大きな損失は仕事上なかったのですが、本来相手を信じやすい性格で相手を悪く思わないので、たびたび騙されて痛い目に会い、煮え湯を飲まされました。外国人だけでなく、外国人に騙されている日本人にも同じように騙されたことがありました。自分の人の良さを恨みました。これを厳しく正してくれたのは、当時の上司でした。「おまえは優しすぎる、甘すぎる、脇があまい」と散々指導されました。その時は、それはあまりに性悪説と思いましたが、今は性善説ではグローバルビジネスはできないというのが私の結論です。今回騙された日本のトップ企業は、国内では超優等生で他流試合の少ない内向きな会社だと思います。

結論を言いますと「グローバルビジネスでは、信じる者は騙される」です。性善説から性悪説に時には変わる勇気を持ってください。相手を疑い、相手の言葉でなく、事実に基づいて自分の頭で考えてください。おかしなことはどんどん聞きましょう。特に相手が理由なく自信を持って言っていることは疑いましょう。それが海外ビジネスで痛い目に会わず、後で相手を恨むことにならないポイントです。日本の中でのビジネスのやり方は通用しません。

それでは、チュース!!

309.東芝事件の真因への対応策

前号ブログで、今回の東芝WH社事件には、ふたつの原因、1.上にモノが言えない、真実を隠す風土 2.海外マネジメントができない があると言いました。その対応策を考えてみました。

1.上にモノが言えない風土、真実を隠す:私は風土改革専門のコンサルにもいましたが、会社の風土はトップが決めています。トップの下の役員は、トップの顔色を見てトップに忖度しながら仕事をしています。その下の管理職はそれにならい、一般社員も薄まっては来ますが上を思んばかって仕事をしています。つまりトップの意向に従うのです。それに合わせるように会社風土はできていきます。上に真実のコトを言っても良い会社にするには、まずトップが悪い事実、情報を感情的にならずに受け入れる態度、姿勢を実践しなければいけません。多くのトップは、自分にとって心地よい情報、事実を持ってくる部下、トップのやっていることを是認、賞讃する情報を報告してくる部下を可愛がり、評価します。だから下は自分の評価を考えて上に悪いことは言えなくなるのです。トップは悪い情報は会社の危機回避、変革の宝物と思い、トップ自らが部下が悪い情報を上げてくることを奨励し、かつ言っても大丈夫なセーフティーネットを張ってあげないと誰も悪いことは言ってきません。また情報をあげる社員、管理職の伝え方も大事です。「トラブル起きちゃいました。困っちゃいました。どうしましょう」を上に言うだけではだめです。自ら知り得た情報だけでなく、その周辺情報も集め、相関、因果関係も整理、その原因究明と、暫定対策、根本対策をできる範囲で伝えることが大切です。しかし何よりもトラブル報告は、スピード、タイミングが重要ですから、完璧な報告は必要なく、80点でOKです。

2.海外マネジメントができない:一番大事なのは現地人トップの人選です。社長にする場合でも日本人の下に置く場合でも同じです。現地人トップは、本社の戦略、方針をきちんと理解し、海外現法の立ち位置を良く理解した上で本社の戦略と整合が取れる戦略を考え実行する人です。その際に必要なのは地頭の良さです。そして人間的に信用できる常識人です。ローカルスタッフからの人望も必要です。日本人を馬鹿にする人間はもってのほかですが、日本人にただへつらう人もお断りです。トラブル、問題に真摯に向き合うことも必要です。彼は日本本社、日本人駐在員と対等に仕事の目的に対して本音ベースの話ができることが重要です。隠しごとをしないで悪いこともすぐにオープンしないといけません。最後にビジネスはリアリティですから理論だけでなく、現実の実務に精通して成果を出す人が必要です。ちょっと多すぎますがそんな要件が現地人トップには必要です。

次に協力する日本人とローカルスタッフ混在のマネジメント・開発等のチームがビジネスが軌道にのるまでは必要です。注意しないと現地人だけのチーム、日本人だけのチームができあがり、似たようなことをしているのに反目しあって互いの悪口を陰で言い合う状況が起きてしまいます。私は実際にその醜い争いを体験、会社の効率がどんどん悪化する悲しさを経験しました。一般的に欧米人は仕事上の議論はかなり激しくやりあっても後にしこりは残りません。逆に日本人は表面的には穏やかなのですが、腹では違うことを考え、本心を隠すことが多く、後で根に持ってうまくいかなくなることがよくあります。仕事と割り切って言いたいこと、思っていることは仕事本意でオープン、ストレート、フランクに十分に議論しつくすことが海外ビジネスをローカルスタッフと進めて行く時は絶対に重要です。遠慮は不要よりかえって害になります。

そんなところが私のふたつの対応策です。

それでは、チュース!!

 

308.東芝に似た会社は日本にたくさんある

東芝がまたたいへんなことになってきています。日本の優良会社の筆頭だった会社です。それが大幅債務超過、上場廃止、倒産の危機を迎えています。今回の直接の原因の原子力子会社WH社のことの経緯はメディアで報道されているのでご存じだと思います。

その背景にある大きな原因は二つのようです。ひとつは以前の粉飾決算の時と同様に悪い情報が上にあげられない、上にものが言えない体質。今回のWH社の財務状況悪化は2011年から起きていたのに、東芝社長が知ったのは2016年12月とのこと、実に5年もの間真実が上に伝わっていなかったということです。しかしこれはウソでしょう。経営トップは事前に知っていたはずです。しかし悪い状況をよくした結果の報告した受けたくなかったのです。だから下も状況は知っていても何も改善できなかったから知らないことにしておくのです。叱られるなら1回でいいと思っているのです。東芝は悪い情報だけあげたら、「おまえは子供の使いか」と怒られる風土だったのだと思います。だから最後になってどうしようもなくなって爆発するのです。

ふたつ目はM&Aした会社のマネジメントができないこと、2006年に買収を決定した元社長は平然とメディア取材にこう答えています。「買収をした私の決断は正しかったが、その後引き継いだ経営陣がマネジメントできなかった。」これは無責任な言い逃れです。あたりまえですが買収をするならそのあとその会社をマネージする実力がなかったらだめです。よく外部コンサルタント会社が言う、自分たちの作った戦略は正しかったが、それを実行できる能力がその会社になかったから失敗した、に似ています。そしてWH社に派遣された日本人たちはプライドの高いWH社の技術者、マネジメントチームから馬鹿にされ、口出しするなと言われて何もできなかったそうです。元からいたWH社幹部社員は、東芝買収もたまたまパトロンが変わったくらいでに思っていて、素人はだまってろ、俺たちは勝手にやるからという態度だったのです。日本本社のトップは日本人駐在員からしか情報は取りません。日本人駐在員は自分がいる間は自分の評価が落ちるであろう現地会社の悪い事実、情報は流しません。自分が転勤するまでどんどん先送りにしていきます。バブル時にソニーが買った映画会社、三菱地所が買ったロックフェラーセンター、などでも現地人経営者の言いなりになって業績悪化しました。日本の会社はずっと同じことを繰り返しています。そういう私もバブル期に富士フイルムが英国でM&Aした会社に最初から売却まで、時には現地経営幹部としても関わり、日本の会社の海外M&Aでの弱点を骨身にしみるまで感じてきました。多くの日本の会社は本当に、気の優しい、いい人なのです。だから海外でなめられてしまうのです。甘く見られてしまうのです。私が駐在、M&Aした会社の前の日本人責任者は、自分のことを、「おしでつんぼ(不適切表現ですみません)のシグニチャ―マシン」と自嘲していました。何もできないで、現地スタッフのご機嫌取りであることを自ら認めていました。富士フイルムは多額の海外授業料を払いましたが、親会社が他ビジネスで収益を上げていたこと、金額が東芝に比較したら軽微だったことで、大ごとにはならず、その責任者もおとがめなしで日本に戻って偉くなりました。

元に戻りますが、今回の東芝事件の原因と言われる 1.上にモノが言えない、真実を隠す 2.海外マネジメントができない、はだいたいの日本の会社の特徴です。ビジネスモデルが安定していて上意下達のトップダウンだけですみ、かつ日本のシステム、やりかた、製品を輸出していれば良い時代ならそれで良かったのですが、現在のグローバル化の進歩はほんとうに急速です。それに対応できない日本の会社は大きい、小さいに関わらず。たくさんあります。なんとかしなければなりません。次回私なりの処方箋を考えてみたいと思います。

それでは、チュース!!

306.海外現法ローカル人社長に期待すること

日本の会社はどんな業種でも最近のグローバル化への対応はまったなしで、海外現地人スタッフの育成が急務になってきています。その方たち対象の研修も増えてきています。今までは企業のグローバル化は、市場戦略の最寄り化に伴い、現地で企画、商品化して現地製造、現地販売の流れの中で優秀な現地スタッフの採用、育成が中心でした。しかしここにきて現地トップをローカルの人にしようという動きが加速しています。いままではスタッフは現地人でもトップには日本人をおき、現地スタッフをマネジメントしていく体制でした。しかしそれでは市場の急激な変化に対応できなくなってきているのです。日本本社にとってもそれはハードルの高い案件ですが、乗り越えていかなくてはなりません。それが真のグローバル企業になっていくプロセスです。ではその際に、彼らに期待すること、必須能力を私の経験、体験から考えてみますと以下の要件になりました。

・日本本社の戦略を良く理解し、全社的見地に立って、ローカル現法の戦略を考え実行する。日本本社の戦略、ローカル現法の戦略を自分の言葉で部下に話せる。

・ローカル内だけの隠し事をせずに、すべてオープンにして本社に報告する。特に悪いことは真っ先に報告する。

・全社の情報をきちんと入手、杷握してそれに対して自分の意見もしっかり言う。

・本社、現法スタッフと本音ベースのコミュニケーションをする。自分の意見も言うが、本社日本人、現地スタッフの話もしっかり聞き妥協点を見つける。頑固にならない。

・これからの海外現法は、自分たちでマーケティング、商品化プラン、開発、製造、販売をすべて行っていくように変わる。それができる優秀ローカル人材を採用、育成する。簡単に辞めさせない。

・うまくいかない原因を日本本社、現法日本人スタッフの原因だけにしない。自分で問題の原因、解決策を考え、実行していく。

・自分の評価を、オープン、フェアにしてもらうようにする。陰で不満を言わない。

・自分の立場を脅かす可能性のあるローカルNo2,No3をつぶさない、育てる。

・自分が日本本社と現地スタッフのかけ橋になるようなつもりで働く。

・何でも相談できる日本人スタッフ、日本、現地で持つ。

このような現地人社長が持てたら、業績が上がっていくことは間違いないでしょう。

それでは、チュース!!

269.海外ビジネスで大事なのは、「わからないことは、わからない」という言う勇気

時々企業研修で、グローバルビジネスに興味のある若い日本人から、海外ビジネスでうまくやっていくには何が大切でしょうかと聞かれます。彼らが期待している私の答えは、
・優秀な英語力や現地の語学力
・異文化コミュニケーションのやりかた
・論理的なモノの考え方、進め方
・それぞれの国々の言語、習慣、風習、文化の理解度を高める
・腹をわった、オープンでフランクなつきあい
・人間的魅力
などです。もちろん、それも確かです。それはできるだけ身に付けたほうがベターです。しかし、一番大事なことは、私の考えでは少し違っていて、かつシンプルです。

それは、「わからないことは、わからない」という言う勇気を持つことだと思います。1989年に、石原慎太郎氏とソニーの盛田昭夫氏が共同執筆した『「No」と言える日本』の心に見ているかもしれません。その本は、日本が多くのこと、ビジネスから国際問題までアメリカ追従の依存的な態度、姿勢ではなく、自尊心を持って自分の考えを堂々と主張しようという主旨でした。

そこまで、普通のビジネスマンは大きく構えなくてもよいのですが、外国人に早口の英語でまくし立てられたり、大勢の外国人に囲まれたり、論理的な筋道で攻めてこられると、多くの日本人は気遅れして、馬鹿にされたくないという気持ちとその場をなんとかしのぎたい、やりすごしたいというあせりから、良く理解していなかったり、まったく理解していなくても、OK、OKや Yes、Yes を連発したり、I agree とか、I support とか言ってしまうのです。これを言えば、その場はクリアできますが、あとになってその修正をするのはたいへんです。かつ、一度賛成の立場、理解と言ったのにあとでそれを否定するとその日本人の信用もなくしてしまいます。

もちろん、わからないというと、ここぞとばかりに、相手はどこからわからないのか、何がわからないのか、なぜわからないのかという質問を矢継ぎばやに飛ばしてくることは必至です。しかし、ここはひるんではだめです。びびってはだめです。針のむしろでも踏ん張るしかないのです。覚悟を決めて開き直るしかないのです。それが海外派遣されたビジネスマンの役割、運命です。もし英語がわからないのでしたら、ゆっくり話して、他の言葉で話してもらい、それでもわからなければ、英語のわかる人間を連れてくればいいのです。とにかく、英語での安請け合いは禁物です。英語はわかっても、言っている内容が理解できないのなら、別の表現をしてもらい、あなたもそのテーマでの自分の意見を事実と論理づけをしっかりして堂々と表現してわたりあうことです。安心して良いのは、海外の場合、日本の場合と違い論理的な仕事上の対立は感情的な対立にはけっして発展しません。あくまでも仕事上の役割上のケンカだということを理解してくれます。堂々と自分の意見を言えば、逆にあなたは尊敬されます。

昔サラリーマン時代、ドイツ駐在時での出来事ですが、ある時、社内のある部門の現地営業マネージャーが、自社製品は、品質は悪く、機能は不足、サポートも不十分、価格も高い。この製品が売れないのは、自分が悪いのではなく日本の会社のマネジメントの責任だと現地法人の社長に怒鳴りこんできました。その社長に部下の私は呼ばれ、「この○○を黙らせろ」と言う命令がでました。(○○は差別用語で使えませんが、西洋人も蔑む言葉です)。私は、その現地マネージャーの言い分再度詳しく聞き、納得できなかったので冷静に言い返しました。「あなたの言っている意味がわからない。製品が良くて、安くて完全ならば、営業であるあなたは必要なくなる。その状況の中でなんとかマネージして売ってくるのがあなたの仕事ではないか。」営業マネージャーは渋々了承しました。とにかく、言われっぱなしで引きさがっては、海外ではダメなのです。しかし同じことを日本ではやらないほうがいいです。念の為のアドバイスです。

それでは、チュース!!